本焼包丁とは
鋼一枚で出来ている和包丁の中の最高級品です。本焼は日本刀と同じような焼き方をする事で、日本刀と同じような波紋が出るので美観も優れています。
本焼きが切れる理由
高硬度のため切れ味の持続性が良いです。本焼きは鍛接工程がないため、比較的低温での鍛造が可能です。それにより、高温保持によって起こる粒子の粗大化(異常粒成長)を防ぐことができ、内部の組織が安定します。
また、霞の場合、焼き入れ時に高炭素量の鋼の炭素が、底炭素量の軟鉄に移動し、鋼の炭素濃度が変化する現象が起こります。この現象により、サビやすさ、切れ味低下を招くことになります。
本焼のメリット、デメリット
メリット | デメリット | |
---|---|---|
本焼 |
|
|
霞包丁(2層、3層構造)との違い
霞包丁との違い | |
---|---|
見た目 |
|
切れ味 | 霞には鍛接(地金と鋼をくっつける鍛造)がありますが、本焼は鍛接が無いので鋼が製造途中に傷みにくいです。その為、鋼本来の性能を発揮しやすくなり、切れ味の持続性の向上が見込めます。 |
研ぎやすさ | 霞は研ぐ面の大部分が地金で柔らかいので、研ぎやすいですが、本焼は研ぐ面全体が鋼で硬いので研ぐのが難しくなります。 |
包丁の寿命 | 霞包丁と比べて本焼包丁は切れ味の持続性が良く歪も出にくいので、研ぐ頻度が少なくなり形も崩れにくくより長期間使うことが出来ます。 |
扱いやすさ | 本焼包丁は霞包丁に比べて全体が硬い為、欠けやすいので包丁の使い方に慣れてない方は少し扱いが難しいです。ですが、手の力が包丁に吸収されることなくダイレクトに食材に伝わるので、包丁の使い方が上手くなるにつれて性能を発揮します。 |
本焼の見分け方
本焼の見分け方は本焼の特徴である波紋があるかどうかを確認します。波紋がある位置は大体包丁の中央から峰側付近に見られます。
逆に刃先に境目がある場合は霞包丁なので、本焼包丁ではありません。
※写真挿入
製造方法
本焼は一般的な包丁と異なる方法で製造します。本焼は霞包丁のような地金が無いので衝撃に弱く、ダメージの逃げ場がないため焼入れ時に非常に割れやすいです。そこで少しでも折れにくくするよう「土置き」という作業をします。土置きとは焼き入れ前に泥状の土を、焼きを避けたい箇所に塗ることです。それにより峰側の鋼は焼きの入らない粘りのある鋼となり、刃が割れるのを防ぎます。土置きの形によって波模様や富士山模様にしています。
このように本焼(水焼き)は焼入れが非常に難しく本焼を作れる職人は堺(全国)でも数人しかいません。
本焼の水焼き・油焼とは
本焼には水焼きと油焼の二通りの焼入れの方法があります。
水焼き:切れ味重視
水焼きは鋼の硬度を硬く作ることが出来、性能を最大限発揮できるので、本焼としては最も良い作り方になります。また、油焼と比べると作るのがかなり難しくなります。實光の本焼では青紙1号、2号、白紙1号、2号は水焼きで製造しています。
油焼き:見た目重視
油焼は波紋が綺麗に出やすいので、波模様や富士山の模様など見た目に凝った物が多いです。また、水焼きと比べて焼入れ時に割れにくいです。
本焼の波紋
本焼の波紋は作る人によって少しずつ形が違い、すべて手作業で作るので同じ人が作ったとしても同じ物は2つと無いです。
本焼の波紋は本来そんなに目立つものではないですが、特殊な仕上げにより波紋を浮かび上がらせます。
また、油焼では波紋が飛ぶことなく綺麗な線上で浮かび上るのですが、水焼きの波紋は波紋が綺麗に出にくく真っ直ぐになったりぼやけたりします。
ステンレスの本焼
本焼とは本来、鋼で作られた波紋のある包丁の事を言います。ですが、近年ではステンレス系統の包丁の需要が増えているので、全鋼の堺で鍛造を経て作られたステンレス系鋼材の和包丁も本焼包丁と呼ばれています。實光では本焼銀三シリーズになります。
お勧めの包丁の種類
本焼に適した包丁の種類は、刺身包丁・フグ引包丁・むき物包丁になります。本焼包丁は切れ味と持続性が良いので、最大の切れ味を要求される食材やカウンターやお客様に見える場所で調理をしていて途中で切れ味が落としたくない時にお勧めです。ですが、本焼は欠けやすいので、硬い物を切る事には向いていないです。
包丁の種類 | 理由 |
---|---|
刺身包丁 | 刺身を引く時など柔らかめの食材に対して抜群の切れ味を発揮します。 |
フグ引 | 刺身包丁同じで柔らかめの食材だけでなく、薄造りをする時に手の力が伝わりやすいので切りやすいです。 |
むき物包丁 | ケンムキなどの大根の桂むきをする時は切れ味が必要になるので、刃先を鋭利に切れ味よく出来る本焼が適しています。 |