「食材によって包丁を使い分けたい」「肉専用の包丁が欲しい」と思っている方におすすめの包丁は、肉の繊維を崩さず美しく切り分けるために作られた筋引包丁です。筋引包丁は「すじひき」と呼ばれ、「筋引き」とも書かれる場合があります。
この記事では、筋引包丁の特徴や用途を徹底解説し、初心者からプロまで納得できる選び方のポイントを紹介します。牛刀や魚用の包丁(出刃包丁)との違いについても詳しく解説します。
さらに、プロが選ぶ筋引包丁の基準となる鋼材や切れ味の持続性にこだわったおすすめモデルもご提案します。實光刃物の筋引包丁ならではの魅力にも触れながら、あなたに最適な包丁選びをサポートします。
また、筋引包丁の切れ味を保つための研ぎ方や、サビを防ぐためのお手入れ・メンテナンス方法も丁寧に解説します。記事の下部には實光刃物の砥ぎ師RYOTAが筋引包丁の研ぎ方を解説した動画も紹介していますので、あわせてご覧ください。
筋引包丁とは、肉のスジをそぎ取り、かたまり肉や肉料理を美しくカットするために設計された特別な包丁です。刃渡りは刺身包丁のように細長く、そのスリムで長い刃は、繊維に沿って均一に切れるよう作られており、肉の美味しさを最大限に引き出します。
他の肉用包丁と比較すると、より正確で滑らかな切り口を実現できるため、プロの料理人からも高く評価されています。筋引包丁は、大型の肉の塊から薄切り肉まで、幅広く対応できるのが特徴です。刺身包丁と形状が似ていることから、両刃の刺身包丁として使用している方も多くいます。
このセクションでは、筋引包丁の形状の秘密と、どのように肉料理の質を向上させるかを詳しく見ていきます。
筋引包丁の形状が生む美しい切れ味
筋引包丁の魅力の一つは、その長くスリムな刃にあります。刃の長さは一般的に240mmから300mmほどあり、長い刃が均一なストロークで肉を切り進めることを可能にします。
この形状は、肉を切る際に余計な力をかけず、繊維をつぶさずに美しくカットすることを実現します。さらに、刃先が鋭く細くなることで、肉の脂や筋を引っかけずに切り抜けることができ、プロが求める滑らかな切れ味を実現しています。他の肉用包丁にはない、筋引包丁ならではのデザインが、食材に美しい切れ目を入れる秘密です。
筋引包丁が活躍する肉料理とは?
筋引包丁は、特にローストビーフやステーキ、焼肉用の薄切り肉など、肉の見た目や食感が重要な料理に適しています。
例えば、ローストビーフを切る際には、長い刃を活かして一度で切り進めることで、肉の断面がなめらかに仕上がり、ジューシーさを保つことができます。また、脂の乗った部位や硬い筋がある部位でも、筋引包丁なら無駄なく美しくカットできます。
その用途は肉料理に限らず、例えばハムや生ハムの薄切りなど、繊細な切れ味を活かす料理にも幅広く応用されます。このように、筋引包丁は美しい仕上がりと食材の風味を損なわないことが求められる料理で真価を発揮します
他の肉用包丁や魚用包丁とどう違う?
包丁には様々な種類があり、用途に応じて使い分けることで食材の質を最大限に引き出すことができます。特に筋引包丁は、その特長的なデザインから、他の肉用包丁や魚用包丁と一線を画す存在です。
ここでは、牛刀や魚用包丁との違いを比較し、筋引包丁を選ぶ際のポイントを解説します。これを理解することで、自分の料理スタイルに合った最適な包丁を選べるようになります。
筋引包丁 vs 牛刀:その違いと選び方
選ぶ際のポイントとしては、料理の幅を広げたいなら牛刀が適していますが、肉料理を美しく仕上げたいなら筋引包丁を選ぶのがおすすめです。
筋引包丁と牛刀の違いを以下の表で比較します:
比較項目 | 筋引包丁 | 牛刀 |
写真 | ||
形状 | 細くて長い直線的な刃 | 厚みがあり先端が丸みを帯びた形状 |
用途 | 大きな肉の塊を美しくスライスするのに適している | 肉・野菜・魚を幅広く扱える万能包丁 |
切れ味 | 繊維を崩さず滑らかにカット | 安定感があり、力をかけやすい |
筋引包丁は魚用の包丁とどう異なる?
筋引き包丁は一般的に両刃の洋包丁であり、スジをそぎ切る際にまっすぐに食材に入り、ある程度の力を入れて切るのに適しています。これに対し、魚を捌くために使われる出刃包丁や刺身を切るための刺身包丁は片刃の和包丁で、構造が異なります。
片刃包丁は食材に対して垂直に刃を入れて切ることができないため、基本的な切り方は引き切りになります。このため、片刃は繊細な作業に特に適しています。
ここからは、刺身包丁、出刃包丁、そして筋引き包丁の違いについて詳しく解説します。
刺身包丁
構造:片刃
形状: 長く薄い刃を持ち、魚の身を滑らかに切るのに特化。
用途: 繊細な魚の身を傷つけず、滑らかにカット。
特徴: 肉ではなく魚の質感を活かすために設計されている。
出刃包丁
構造:片刃
形状: 厚みがあり、骨を切るのに強度を発揮する刃。
用途: 魚の下処理や骨を切る際に使用。
特徴: 魚を扱う際の強度が求められる作業に適している。
筋引包丁
構造:両刃
形状: 細長い刃で、肉の繊維に沿ってカットするために設計。
用途: 大きな肉を滑らかにスライスするのに最適。
特徴: 肉の脂や筋を引っかけずにカットするため、肉料理に特化している。
プロが選ぶ筋引包丁の選び方
筋引包丁を選ぶ際に、プロの料理人たちはどのようなポイントに注目しているのでしょうか?肉料理の仕上がりを美しくするためには、鋼材の種類や刃の長さが重要な要素になります。
このセクションでは、プロが重視する鋼材と切れ味、そして用途に合わせたサイズの選び方を詳しく解説します。自分の料理スタイルに合った筋引包丁を見つける手助けになるでしょう。
料理人が推す鋼材と切れ味のこだわりポイント
プロの料理人が筋引包丁を選ぶ際に特にこだわるのが、使用されている鋼材の種類です。鋼材は包丁の切れ味や耐久性に直結する重要な要素です。一般的に、筋引包丁には以下の2種類の鋼材がよく使われます:
ハガネ系の鋼材:
切れ味が鋭く、研ぎ直しもしやすいのが特徴です。特におすすめなのが青紙スーパーで、この鋼材は切れ味が非常に鋭く、持続性に優れています。プロの料理人からも評価が高く、筋や脂をスムーズにカットすることができます。ただし、ハガネ系の鋼材はサビが発生しやすいため、使用後のメンテナンスが必要です。しっかりと乾燥させ、適切に保管することで長く使用できます。
ステンレス系の鋼材:
サビに強く、メンテナンスが比較的簡単なのが利点です。特に粉末ハイスのSG2や、STRIX鋼材は、切れ味が鋭く持続性も抜群です。SG2は硬度が高く、切れ味が長く続くため、プロから家庭料理まで幅広いシーンで使用されています。STRIXはさらに高いパフォーマンスを持ち、耐摩耗性も優れているため、安定した性能を求める方におすすめです。ステンレス系は手入れが簡単で、扱いやすさを重視する方にぴったりです。
これらの鋼材は、それぞれの特徴を理解して選ぶことが重要です。切れ味を重視するなら青紙スーパー、メンテナンスのしやすさと持続性を重視するならSG2やSTRIXを選ぶのがベストです。
あなたに最適な筋引包丁サイズは?240mm or 270mm
筋引包丁のサイズ選びも非常に重要です。一般的には240mmと270mmの2種類があり、どちらを選ぶかで使い勝手が変わります。
240mmの筋引包丁:このサイズは取り回しがしやすく、初心者でも使いやすいのが特徴です。小さめの肉や家庭用に適しており、キッチンのスペースが限られている場合にも便利です。また、扱いやすいため、初めて筋引包丁を使う方や精密なカットを求める料理に向いています。
270mmの筋引包丁:こちらは長さがあるため、大きな肉の塊や一度で長くカットする必要がある場面で重宝します。プロの料理人や、肉を美しくスライスしたい方におすすめです。ローストビーフ・スペアリブ・焼き豚(チャーシュー)などを調理する際には、長い刃がスムーズな切れ味を発揮します。ただし、長さがある分、使いこなすには少し慣れが必要です。
具体例として、自宅でローストビーフやステーキを頻繁に作る場合は270mmを選ぶと切れ味が活かせますが、日常使いには240mmの方が便利かもしれません。用途や調理環境を考慮して、自分に最適なサイズを選びましょう。
プロの仕上がりを実現!實光刃物のおすすめ筋引包丁
ここからは、包丁を120年以上作り続けている實光刃物がおすすめする筋引き包丁をご紹介します。筋引き包丁は洋包丁のため、ハンドルがピンでとめられている洋包丁スタイルの物が一般的ですが、實光刃物では様々なハンドルが選べて、洋包丁スタイルよりも包丁全体が軽量になる和包丁スタイルの筋引包丁をおすすめしています。
洋包丁スタイル(一般的な筋引包丁) | 和包丁スタイル(和筋引) |
使いやすさはもちろん、デザインにもこだわった實光刃物の筋引包丁をご覧ください。
【フレア】筋引240】最強の切れ味を求める方におすすめ
最高の切れ味を誇るSPG STRIX鋼材を採用した【フレア】は、抜群の切れ味が長持ちすることが特徴です。この鋼材は、ステンレス系の粉末ハイスであるSPG STRIXを使用しており、さびにくく、お手入れのしやすさも兼ね備えています。
ステンレス鋼でありながら、ハガネにも劣らない鋭い切れ味を持ち、さらに研ぎやすいため、どの面から見ても優れた包丁です。最高の切れ味と使いやすさを求める方におすすめの特別な一本です。
【Kappa SG2】和筋引 誰も持っていない美しいデザイン包丁
實光オリジナルの和筋引包丁【Kappa和筋引】は、かっこいい色鮮やかなハンドルと美しいダマスカス模様が特徴です。刀身は少し反りがあり、スッと長くスリムな形状が、どんな肉でも美しく切り分けられるようにデザインされています。
ハンドルには赤を基調としたマーブル模様が施されたスタビライズウッドを採用、一本一本色の出方が異なるため、まさに世界に一つだけの包丁となります。
【銀三】和筋引 シンプルな和包丁のような筋引包丁
和包丁に多く使われる銀三鋼は、切れ味がよく研ぎやすい鋼材として知られています。その切れ味の良さは和食の職人たちにも認められており、多くの日本料理人が愛用しています。
繊細な日本料理でも使用される鋼材であることから、切れ味と使いやすさは折り紙付きです。ハンドルには、手になじみやすく滑りにくいソフトなホウノキが採用されており、使いやすさをさらに高めています。
【JIKKO式】肉切り包丁 肉専用に作られた、肉を切るための包丁
大きくカーブした刀身が特徴的な肉切り包丁は、肉を切るための肉専用の包丁です。鋼材は切れ味が良いハガネ系の青紙スーパーを採用、脂がのった肉を切り分けるのに最も適した包丁と言えます。
ハンドルは手の中になじむアーチ形で握りやすく、レジン製のハンドルのため汚れが付きにくく長持ちするタイプのハンドルです。
筋引包丁を長持ちさせるお手入れとメンテナンス
筋引包丁は、しっかりとお手入れをすることで、その美しい切れ味を長く保つことができます。特に肉料理に特化した筋引包丁は、切れ味が命です。適切なメンテナンスを行うことで、包丁の寿命を延ばし、最高のパフォーマンスを引き出しましょう。
このセクションでは、効果的な研ぎ方とサビを防ぐ保管方法について詳しく解説します。
筋引包丁の切れ味を守る!プロ直伝の研ぎ方
筋引包丁の切れ味を長持ちさせるためには、段階的で丁寧な研ぎ方が重要です。ここでは、プロによる研ぎ方のポイントを、箇条書きや表を交えながら解説します。
【使用する道具】
砥石: 400番、1000番、6000番、13000番(使用しているのはセラミック砥石)
ダイヤモンド面直し: 砥石の平面を整えるための道具
サビ取り用消しゴム: 包丁の表面のサビを取り除くための消しゴム
新聞紙や布: 最後に残る微細なバリを取るため
必要であれば砥石台、またはまっすぐな台に布巾をのせる
400番 | 1000番 | 6000番 | 13000番 |
ダイヤモンド面直し | さび取り消しゴム | 砥石台 | |
【研ぎの工程】
工程 | 使用する砥石 | 角度 | 目的 |
コバ付け | 400番 | 約15度 | 刃先の修復(平らになった刃先を鋭くする) |
ベタ研ぎ | 1000番、6000番、13000番 | ほぼ水平(包丁を押した角度) | 刃の厚み調整(切れ味と滑らかさを整える) |
仕上げ | 新聞紙や布 | 直角に軽くこする | バリを取り除き、滑らかな刃先に仕上げる |
【研ぎの手順】
刃先の修復(コバ付け)
刃先の鈍った部分を研ぎ、鋭くします。まず400番の砥石を使い、15度の角度で刃を研ぎます。砥石に対して45度の角度で包丁を置き、左右均等に研ぎます。
金属の「かえり」が出るまで繰り返します。かえりは指で触ると引っかかりがあり、刃が整ったことを確認できます。
刃の厚み調整(ベタ研ぎ)
コバ付けで鋭くした刃の厚みを調整します。1000番から始め、6000番、13000番の順で目の細かい砥石を使います。
刃先全体が均等に砥石に触れるよう、水平に近い角度(ほぼフラット)で研ぎます。刃が滑らかになり、抵抗が少ない状態にすることで、切れ味がアップします。
仕上げ(バリ取り)
最後に、新聞紙や布に対して刃先を軽くこすり、微細なバリを取り除きます。刃を新聞紙に直角に立て、左右に軽く動かし、滑らかな刃先を作ります。
【研ぎのポイント】
研ぐ角度を一定に保つ: 15度を意識し、角度がずれないように安定させることが重要です。
砥石の面直しをこまめに: ダイヤモンド面直しを使い、砥石の表面を平らに保つことで、研ぎの精度が上がります。
細かい砥石で段階的に仕上げる: 400番から13000番まで砥石を細かく変えることで、研ぎ時間を短縮し、滑らかで鋭い刃を作れます。
↓筋引き包丁の研ぎ方を動画で見る方はこちらから↓
錆び知らずの保管方法と日常のお手入れのコツ
筋引包丁を錆びさせず、長持ちさせるためには、適切な保管方法と日々の手入れが欠かせません。ここでは、サビの発生を防ぎ、包丁の切れ味を保つための具体的な方法を紹介します。
【使用後の基本的なお手入れ】
1,すぐに洗浄
包丁を使用したらすぐに流水で洗い、血や脂を落とします。柔らかいスポンジと中性洗剤で優しく洗い、刃を傷つけないようにしてください。硬いタワシや研磨剤入りのスポンジは避けるようにします。
2,水分を完全に拭き取る
洗浄後は清潔な布巾で水分を丁寧に拭き取ります。刃の付け根やハンドル部分には水分が残りやすいため、特に注意しましょう。完全に乾燥させることで、サビの発生を防ぎます。ステンレスの包丁でも全く錆びないわけではありません。水分がついたまま包丁を自然乾燥させるのはやめましょう。
【包丁の保管方法】
湿気の少ない場所に保管
包丁は湿気がたまりにくい場所に保管します。包丁スタンドや磁気ホルダーを使用する場合も、湿気がこもらないよう通気性の良い場所を選びましょう。
オイルでのサビ防止
ハガネ系の包丁には、表面に食用油を薄く塗って保管すると効果的です。これにより、酸化を防ぎ、サビの発生を抑えることができます。椿油や包丁専用のサビ止め油を少量ティッシュやキッチンペーパーなどに含ませて刃全体に塗布し、保管するだけでサビ防止効果が得られます。
プロも愛用する筋引包丁で肉料理を極めよう!
筋引包丁は、肉を美しくカットし、その質感と味を引き立てるために設計された特別な包丁です。そのスリムで長い刃の形状から生まれる切れ味は、プロの料理人にも愛され、ローストビーフやステーキ、薄切りの肉料理に最適です。他の肉用包丁や魚用包丁と比較しても、肉料理の仕上がりに大きな差を生み出します。
選ぶ際には、切れ味とメンテナンス性を考慮して青紙スーパーやSPG STRIXのような鋼材を選ぶと良いでしょう。また、240mmや270mmといった長さの選択も、用途に応じて変わります。使用後のお手入れも重要で、適切な研ぎ方やサビ防止の工夫によって包丁の寿命が大きく延びます。
特に實光刃物の筋引包丁は、美しいデザインと優れた切れ味を兼ね備え、肉料理の質をワンランクアップさせる一本です。この記事を参考に、ぜひ自分にぴったりの筋引包丁をみつけてください。