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片刃包丁と両刃包丁で切れ味は変わるのか?実際に切り比べてみた

料理愛好家やプロの料理人にとって、包丁は最も重要な道具の一つです。今回は、一般的な両刃包丁と専門的な片刃包丁の切れ味にどのような違いがあるのかを検証しました。

この検証では、トマトやカボチャ、刺身など様々な食材を使い、両刃包丁と片刃包丁での切れ味を比較しています。明治33年創業、堺包丁の専門店・實光刃物の研ぎ師にして、YouTubeで包丁にまつわる知識や技術を発信している「RYOTA」の検証動画も合わせてご覧いただけると幸いです。

ここでは、片刃包丁と両刃包丁の基本的な違いを説明します。一般的に家庭用で使用されている万能タイプの包丁は両刃の物が多く、日本料理の料理人が使っている出刃包丁や刺身包丁は片刃の包丁です。

 

特徴 片刃包丁 両刃包丁
片刃万能包丁arata牛刀 プレミアム2牛刀包丁
刃の構造 刃が片側にのみ付いている。 刃が両側に付いている。
使用される料理 主に日本料理専用(刺身、魚のおろし等)。 万能型で、肉、野菜など様々な食材に適用。
切り口の鋭さ 非常に鋭い切り口が特徴で、精密なカットが可能。 比較的鋭いが、片刃ほどではない。多目的に使用可能。
デザイン 刃が非対称で、特定の角度や方向での使用に特化。 刃が左右対称で、どの角度からでも均等に切りやすい設計。
向いている作業 精密な作業や特定の食材の調理に適しており、専門的な技術を要する。 日常的な調理や多様な食材の処理に適しており、初心者にも扱いやすい。
利便性 特定の切り方(例えば右利き用)に最適化されている場合が多い。 どちらの手でも使用しやすい汎用性があり、使い勝手が良い。
食材の張り付き 裏スキがあり、食材が張り付きにくい。これにより滑らかな切り分けが可能。 裏スキがなく、食材の張り付きがあるかもしれない。しかしまな板に垂直に下ろしやすい。
切りやすさ 特定の技術を要するが、極めてシャープなカットが可能。 まな板に対して垂直に包丁を下ろすことが容易で、一般的な使用に適している。

 

片刃包丁の特徴

 

片刃包丁:表面 片刃包丁:裏面
白二出刃包丁 白二出刃包丁裏側
表面は研いで刃が付けられている。

真ん中にしのぎ筋という境目があり、その部分が少し出っ張った形状になっている

包丁の真ん中が少しくぼんでいる裏スキがある。

 

片刃包丁は、刃が片側にしかないため、切り口が非常に鋭くなることが特徴です。これは主に日本料理で使用され、刺身を切るための包丁や魚を3枚におろす際に用いられます。片刃包丁は、食材に対して非常に精密なカットが可能であり、料理の質を向上させることができます。

両刃包丁の特徴

 

両刃包丁:表面 両刃包丁:裏面
SG2(R2)洋三徳包丁 R2洋(SG2)三徳包丁裏側
裏表対称の「ハマグリ刃」という緩やかにカーブしている形状。刃先も左右対称の「小刃付け」が施されている。

 

一方、両刃包丁はその名の通り、刃が両側に付いており、より一般的な使用に適しています。家庭でよく使用される万能包丁がこのタイプで、肉や野菜など様々な食材を効率良く切ることができます。両刃包丁は、左右対称の形状をしており、どの方向からでも切りやすい設計になっています。

両刃包丁と片刃包丁:実際の切り比べ検証

ここからは實光刃物の砥ぎ師、RYOTAが片刃包丁と両刃包丁を使って実際に切り比べをした内容を解説します。

切り比べで使用した包丁について

仕上げ方法の説明

上記の包丁が検証に使用した包丁です。どちらも同じ砥石を使い、同じような角度でしあげているので、刃先の状態はほぼ同じように仕上がっています。

  • 写真:(左側)片刃包丁(右側)両刃包丁
  • 鋼材: どちらも銀紙三号
  • 包丁の種類: どちらも牛刀
  • 刃渡りサイズ: 240mm
  • 研ぎ方: どちらも小刃付けをしている

切り始めの印象

両刃包丁での切れ味 片刃包丁での切れ味
両刃の紙の切れ味

検証の最初に、両種類の包丁でコピー用紙を切ってみるテストを行いました。結果からは、両方の包丁ともに優れた切れ味を示し、目立った差は見られませんでした。

【切り比べ動画を見る】

食材を使ったテスト

下記が実際に検証を行った様子です。砥ぎ師RYOTAの感想も一緒にご覧ください。

 

両刃包丁での切れ味(トマト) 片刃包丁での切れ味(トマト)
両刃包丁のトマトの切れ味 片刃包丁のトマトの切れ味
研ぎ師RYOTAのコメント:

片刃包丁の方がトマトへの切り込みがよく、切りやすいと感じました。片刃の方がブレずにスッと切れた感覚がありました。

 

両刃包丁での切れ味(大根の輪切り) 片刃包丁での切れ味(大根の輪切り)
両刃包丁の大根の切れ味 片刃包丁の大根の切れ味
両刃包丁大根の輪切り 片刃包丁大根の輪切り
研ぎ師RYOTAのコメント:

切る時の感触は片刃の方がスッと入った感覚。両刃包丁は少し入っていく感覚が重いように感じました。どちらも断面はキレイに切れていますが、両刃包丁の方が左右対称なのに対し、片刃で切った大根は少し斜めに刃が入った関係上少し左右差が出てしまいました。

両刃包丁での切れ味(大根の桂剥き) 片刃包丁での切れ味(大根の桂剥き)
両刃包丁片刃包丁大根の桂剥き
研ぎ師RYOTAのコメント:

片刃の包丁の方がスルスルと滑るように動くので切りやすく、逆に両刃は引っかかる感覚があり、包丁を動かしにくく感じました。

両刃包丁での切れ味(大根のけん) 片刃包丁での切れ味(大根のケン)
両刃包丁の大根のけんの切れ味 片刃包丁の大根のけんの切れ味
研ぎ師RYOTAのコメント:

両方とも問題なく切りやすい感じでした。若干片刃が安定してきれやすいような気がしました。

両刃包丁での切れ味(かぼちゃ) 片刃包丁での切れ味(かぼちゃ)
両刃包丁のかぼちゃの切れ味 片刃包丁のかぼちゃの切れ味
研ぎ師RYOTAのコメント:

片刃の方がスッと入った感覚ですが、斜めに入ったので、カボチャの切り方が斜めになってしまいました。

両刃包丁のかぼちゃのうすぎり 片刃包丁のかぼちゃのうすぎり
研ぎ師RYOTAのコメント:

薄切りに関しては両刃の方が切りやすいと感じました。両刃の方がまっすぐスッと進む感覚で、片刃は斜めに入るので、薄切りをするのは難しくなります。

両刃包丁での切れ味(鯛の平造り) 片刃包丁での切れ味(鯛の平造り)
両刃包丁の鯛の平造りの切れ味 片刃包丁の鯛の平造りの切れ味
研ぎ師RYOTAのコメント:

ほとんど変わりありませんでしたが、やや片刃の方が切りやすかったように感じました。

両刃包丁での切れ味(鯛のそぎ切り) 片刃包丁での切れ味(鯛のそぎ切り)
両刃包丁の鯛のそぎ切りの切れ味 片刃包丁の鯛のそぎ切りの切れ味
研ぎ師RYOTAのコメント:

両刃の包丁も切りにくいという感覚はなかったのですが、片刃包丁の方が角度が安定し切りやすいと感じました。

全体的な感想は、片刃包丁の方が切れ味が良いように感じました。片刃の方が食材への入り込みが良いので、スッと切れる感覚がありました。ただ両刃も切れ味が悪いわけではなく、とてもいいということが分かりました。一番わかりやすかったのが、大根の桂剥きの時で、片刃の方が断然切りやすかったです。

【切り比べ動画を見る】

切れ味の総合的な評価

一連のテストを通じて、片刃包丁と両刃包丁ではそれぞれに長所と短所があることがわかりました。両刃はまっすぐおろして切ることに向いており、片刃は斜めに切ったり横に動かす桂剥きの時に切れ味を発揮することが検証できたと思います。

つまり、片刃の切れ味の良さと両刃の切れ味の良さは切り方によって変わってくるのだということが言えます。

片刃包丁は特定の方向に対する精密なカットに優れており、一方で両刃包丁はどんな食材も均等に扱いやすく、日常の多様な料理に適しています。

よくある質問

Q: 包丁は片刃と両刃のどちらが良いですか?

A: 包丁が片刃か両刃かの選択は、用途や使い手によって異なります。片刃包丁は片側だけが研がれているため、非常に鋭い切れ味を持ち、魚の捌きや精密な作業に適しています。特に和包丁でよく見られ、刺身や薄切りなど、正確な切り方が求められる料理に向いています。ただし、右利き用や左利き用があるため、初心者にはやや使いにくい場合があります。一方、両刃包丁は、左右対称に研がれており、初心者でも扱いやすく、野菜や肉などさまざまな食材に対応できる汎用的な包丁です。特に家庭用の三徳包丁や洋包丁に多く使われ、切る際に力を真っ直ぐ加えやすいのが特徴です。日常的な調理には両刃が使いやすい一方、専門的な作業には片刃が向いています。

Q: 片刃包丁のデメリットは?

A: 片側だけが研がれているため、切る際に包丁が片側に引っ張られるため、真っ直ぐ切るのが難しく、慣れが必要です。また、片刃包丁は左右対称ではないため、右利き用と左利き用があり、どちらかに特化した包丁を選ぶ必要があります。また、片刃包丁は特定の用途に特化しているため、魚を切るには出刃包丁、刺身を切るには刺身包丁、野菜を切るには薄刃包丁など食材にあった包丁を選ぶ必要があります。

Q: 片刃の包丁は何に使う?

A: 片刃の包丁は、特定の用途に特化した料理で使われることが多いです。たとえば、刺身包丁(柳刃包丁)は片刃で、魚を薄く正確に切り、綺麗な断面を作るのに適しています。また、出刃包丁も片刃で、魚の頭を落としたり、骨に沿って捌く作業に使われます。片刃包丁は、鋭い切れ味と正確さを必要とする作業に向いています。和食の調理では特に重要で、例えば薄切りや繊細な飾り切り、魚の皮を一枚ずつ剥がす作業など、細やかな仕事を正確にこなすことが可能です。また、野菜を薄く均一に切るための薄刃包丁なども片刃であり、これも細かい作業に適しています。片刃包丁は、料理の見た目や仕上がりにこだわるプロや、和食を楽しむ料理愛好家にとって、不可欠なツールです。

Q: 和包丁はなぜ片刃が多いのですか?

A: 和包丁が片刃である理由は、主に日本料理の特性と切り方に関係しています。日本料理では、食材の繊細さや美しさを大切にするため、精密で正確な切り方が求められます。片刃包丁は、片側が研がれていることで非常に鋭い切れ味を持ち、食材に無駄な力をかけずにスムーズに切れるため、断面が美しく仕上がるのが特徴です。このため、刺身や飾り切りなど、見た目が重要な料理に適しています。 また、片刃包丁は、刃が研がれていない側に食材を沿わせることで、まっすぐ正確に切り進めることができるため、魚の捌きや薄切りなどの作業で特に有効です。

両刃包丁・片刃包丁どちらの包丁が適しているか

料理の種類や目的に応じて、最適な包丁を選ぶことが重要です。片刃包丁は専門的な料理や、美しい仕上がりを求める場合に適しており、両刃包丁は日々の料理で幅広く使えることが確認できました。どちらの包丁もその利点を生かして、料理の楽しさと美味しさを追求することができるでしょう。

今回の検証が包丁選びの一助となれば幸いです。次回は、包丁の素材に焦点を当てた切れ味の比較を行い、食材の味にどのような影響を与えるかを検証する予定です。ぜひご期待ください!

 

實光刃物 四代目:實光俊行(じっこう としゆき)

實光刃物 四代目:實光俊行(じっこう としゆき)
「實光刃物(じっこうはもの)」は大阪の堺で明治33年に創業し、包丁(刃物)の製造と販売をしています。一期一会の精神で、お客様との瞬間を大切に。切れ味へのこだわりを胸に、日々技術の向上に励んでいます。技術の継承と共に、将来は世界中で愛される堺包丁のブランドを築き上げる夢を抱いています。
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