美味しく魚をさばくのに「出刃包丁」は欠かせない包丁です。しかし、どの出刃包丁がおすすめなのか、サイズや材質をどう選ぶべきなのか、悩む方も多いでしょう。
本記事では、明治33年創業、堺刃物の實光刃物が出刃包丁の正しい選び方、鋼材やサイズについて、また出刃包丁のメンテナンスについても徹底解説します。そして最強の切れ味を持つ出刃包丁やデザインがかっこいい出刃包丁、手入れが簡単なステンレス出刃包丁など、あなたにあった出刃包丁をおすすめいたします。
さらに、出刃包丁の研ぎ方については動画を加えて分かりやすく説明しますので、出刃包丁など本格的な和包丁を使うのが初めての方も安心です。ぜひ動画も合わせてご覧ください。
出刃包丁は、日本の伝統的な和包丁の一種で、主に魚をさばくために使用されます。その特有の形状と構造は、魚を三枚おろしにし、魚の骨や頭を切断するのに適しており、魚料理をする際には欠かせない道具です。ここでは、出刃包丁の基本的な知識と用途について詳しく解説します。
出刃包丁とは?出刃包丁の用途を解説
出刃包丁(表) | 出刃包丁(裏) | 出刃包丁の厚み |
出刃包丁は、厚みのある頑丈な刃と、片刃の構造が特徴です。この形状により、魚が切りやすく、硬いものを切っても刃がかけにくく耐久性がある包丁になっています。
片刃の構造は刃が右側のみに付けられているため、魚を三枚おろしにするために背骨に沿って一方方向に切り進めやすくなっています。また、裏側は裏スキとよばれるくぼみがあるため、魚の身が包丁に張り付きにくくなっているため、魚の身がよれにくく、キレイに切ることが可能になります。
出刃包丁(表)
全体的には厚みのある出刃包丁ですが、切り刃と呼ばれる刃が付いている部分があり、刃先は非常に鋭く薄くなっています。そのため柔らかい魚の身に切り込みやすく、繊維をつぶさず美しく切れるようになります。
出刃包丁(裏)
出刃包丁の裏側には「裏スキ」と呼ばれるくぼみがあり、まっすぐではありません。このくぼみが和包丁の片刃の特徴で、食材が張り付きにくく、食材と包丁が接する面積が減るので、包丁が進みやすくなります。
出刃包丁の厚み
出刃包丁はその他の包丁に比べて厚みがある重い包丁です。この厚みがあることで、刃が頑丈になっており、硬い魚の骨を切断したり頭を落としたりすることが可能になります。
出刃包丁は必要?普通の包丁の違いは?
出刃包丁が必要かどうかは、どんな料理をするかによります。魚を料理する場合、出刃包丁は非常に有用です。普通の包丁で魚をさばくことも可能ですが、刃が薄いため骨を切る際に刃が欠けやすく、両刃の包丁は刃が安定しにくいため、片刃のように美しく切ることが難しくなります。
一方、出刃包丁はその頑丈な造りと適した重量により、少ない力で効率的に作業を進められます。つまり、魚料理をするならば出刃包丁は必要と考えた方が良いでしょう。
出刃包丁の種類
実は出刃包丁と言っても様々な種類があり、その形やサイズも様々です。一般的な出刃包丁は写真のような包丁です。家庭用としてよく使われるのは、刃渡り150mmから180mm程の大きさです。小さなサイズは「小出刃」と呼ばれることもあります。
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左利き用の出刃包丁はあるの?
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「左利きの出刃包丁はあるの?」というお問い合わせを多くいただきますが、「はい、左利き用の出刃包丁も存在します。」片刃の出刃包丁は、通常右利き用に設計されていますので、左利きの方は使用することができません。そのため、左利きの方には左利き用に特別に設計された出刃包丁を使用しなければなりません。左利き用の出刃包丁は、刃の角度や形状が左利きの動作に合わせて調整されており、右利き用の包丁と同様に快適に使用することができます。
しかし、左利きの出刃包丁は通常の出刃包丁のようにたくさん作られていません。通常右利き用の包丁を作っている職人にとって、全てが逆の左利きの包丁を作るのは非常に難しい包丁です。つまり、熟練の職人しか作ることができない包丁と言えます。そのため、實光刃物でも左利きの包丁は通常の包丁より値段が高価になり、在庫が少ないため、注文をいただいてからお客様にお渡しするまでにお時間がかかる場合が多くなります。
あなたに合った出刃包丁の選び方
出刃包丁を選ぶ際には、材質(鋼材)とサイズ選びが重要です。包丁選びで失敗したことがある人の多くは、包丁の特性をよく理解せずに、値段だけで決めてしまった場合がほとんどです。
切れ味、使いやすさ、メンテナンス性などを考慮して出刃包丁を選ぶためには、材質とサイズについての知識が必要です。ここでは、分かりやすく解説しますので、自分の求める出刃包丁の材質とサイズを選びましょう。
材質の選び方:切れ味とメンテナンス方法が変わる
包丁の材質を理解するには、まず鋼(ハガネ)系のサビる材質とステンレス系のさびにくい材質があることを理解しましょう。
日本食に使われている和包丁はハガネ系の材質の物がほとんどで、さびやすいですが、切れ味がよく繊細な作業に向いています。一方、ステンレス系の鋼材は切れ味はハガネ系の物に比べて切れ味が少し劣りますが、さびにくいため手入れが簡単で使いやすい材質です。出刃包丁はどちらが良いのかと言われると、ハガネ系の材質です。魚はやわらかく繊細な食材のため、切れ味が良いハガネ系の鋼材の包丁が適しています。おすすめの出刃包丁の鋼材は白紙2号や青紙2号の鋼材です。
下記は白紙2号と青紙2号の比較です。どちらが自分に合った鋼材か検討する際に便利です。
白紙2号 | 青紙二号 | |
硬さ | 良い切れ味のための十分の硬さがある | 切れ味が長持ちするため、非常に硬い |
切れ味 | 料理人が好む良い切れ味 | 料理人が好む良い切れ味 |
砥ぎやすさ | 砥ぎやすい | 硬さがあるので、少し研ぎにくく時間がかかる |
参考価格 (實光商品の場合) |
150mm 32,560円 180mm 38,940円 【白二 出刃包丁】 |
150mm 46.970円
180mm 60,280円 |
特徴 | 砥ぎやすいため、自分好みの切れ味にしやすい鋼材。 | 硬い鋼材のため、切れ味が長持ちする。 |
白紙2号は切れ味がよく、砥ぎやすいバランスの取れた材質です。そのため、これから包丁研ぎを学びたいと考えている方にもおすすめの鋼材です。また、自分の研ぎを極めている方にとっても、自分好みの研ぎがしやすく、切れ味を追求することができるので、おすすめできます。
青紙2号は切れ味が長持ちするので、捌く魚の量が多い人や頻繁に研ぎができない忙しい料理人の方におすすめの鋼材です。価格は白紙よりも高くなりますが、包丁研ぎを頻繁にしないということは包丁の寿命が長いと言い換えることが可能になります。長く快適に使える包丁が欲しいと考えている方に使っていただきたい鋼材です。
サイズと重量の選び方:使いやすさに直結する
出刃包丁のサイズは「あご」と呼ばれる包丁の刃先の下から先までの長さを言います。出刃包丁の刃渡りは120mmから300mmほどまでありますが、一般的に家庭用で使われるサイズは120mmから180mmです。
出刃包丁のおすすめのサイズの選び方は、良く料理する魚の大きさによって決める方法です。捌く魚の縦の幅と同じくらいの刃渡りサイズを選ぶと最適のサイズです。
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小さい魚しか捌かないのであれば、包丁も小さく120mmくらいの出刃包丁を選べば、軽くて細かい作業もしやすくなります。魚が大きい場合は、小さい包丁で捌くと上下の動きを何度もしてしまうと魚の身がよれてしまったりガタガタになってしまうので刃渡りが大きめの包丁を選ぶようにしましょう。
魚の大きさが分からない方は、一般的によく使われる150mmの包丁がおすすめです。出刃包丁は重い包丁のため、大きな包丁はかなり重く扱いにくくなる場合があります。初心者の方にとっては150mmくらいの包丁が最も使いやすい出刃包丁と言えます。
實光刃物がおすすめする出刃包丁
ここからは包丁のプロ實光刃物がおすすめする出刃包丁について、ご紹介します。出刃包丁はシンプルな和包丁しかないと思われていますが、様々な鋼材があり、デザインも選べる包丁です。實光刃物の豊富な在庫の中から厳選した商品をご紹介します。
切れ味最強!高級鋼材の出刃包丁
大人気のYaibaシリーズの出刃包丁です。Yaibaシリーズは實光刃物の研ぎ師RYOTAが本刃付けしている包丁で、切れ味にこだわる方に使っていただきたい商品です。天然砥石で仕上げた本刃付けの切り刃は天然砥石独特の霞がかった光沢があり、平の部分は鏡面仕上げをしています。ハンドルは耐久性が良い白レジンの銀巻を採用しています。
白紙二号は鋭い切れ味を持ち、砥石で研ぎやすいハガネ系の鋼材です。青紙二号に比べて切れ味が長持ちする鋼材ではありませんが、砥石で研ぎやすいので、自分で良い角度に調整しやすい材質と言えます。出刃包丁は硬いものを切るので、頻繁に研ぎをして切れ味を良い状態に保つのが良い使い方です。そのため、白紙二号は出刃包丁に最適な鋼材です。
デザインがかっこいい出刃包丁
黒一色にしたかっこいい凛とした包丁【銀座シリーズ】、切っ先を切付スタイルにしているので、シャープなイメージもあります。刀身は黒染め加工で真っ黒にしているおり、ハンドルは高級感があるツヤがある黒檀の木柄を採用しています。
先述した銀座シリーズに対して、【祇園】シリーズは白で統一した包丁です。刀身はサンドブラスト加工でマットで白く、ハンドルは耐水性にも優れたレジン素材を採用しています。包丁のハンドルで純白を採用している包丁はほとんどなく、清潔感のある白のハンドルが特徴的です。
高級感があって、特別な包丁をお探しの方にとっておすすめな包丁【至光】シリーズ。細部までこだわった美しい仕上げと、黒檀の黒と銀巻の銀のコントラストがかっこいい黒檀銀巻柄が特徴的です。
手入れが簡単 ステンレス出刃包丁
實光のオリジナルブランドの包丁には、ステンレス系の材質の包丁も取り揃えています。【銀三】という材質はステンレス系の高級鋼材で、切れ味が良い材質です。
ターコイズ黒檀柄が印象的で、個性的な包丁です。使いやすいだけでなく、切れ味もデザインにもこだわった包丁です。
美しい黒一色の【銀座】シリーズにもステンレス素材の包丁を取り揃えています。
出刃包丁の使い方とメンテナンス方法
出刃包丁は魚を捌くために最適な包丁ですが、そのポテンシャルを最大限に引き出すためには、正しい使い方とメンテナンスが欠かせません。ここでは、基本的な使い方から、包丁の研ぎ方、そして日常の手入れ方法について詳しく解説します。
基本的な使い方
出刃包丁は、特に魚を捌く際に活躍する包丁です。以下は、出刃包丁を使った魚の基本的な捌き方の手順です:
1.下準備:まず、魚の鱗を取り、内臓を取り除きます。内臓は腹に切り込みを入れて取り除きます。
2.頭を落とす:魚をまな板の上で安定させ、出刃包丁を使って頭を切り落とします。骨の硬い部分を切る際には包丁の根元部分を使うと力が入りやすく、効率的に切断できます。
3.三枚おろし:魚を横に寝かせ、腹の部分と背の部分に先に包丁の切っ先部分で切り込みを入れます。その後背骨に沿って包丁を入れ、骨と身を切りはなします。片側の身を切り取ったら、魚をひっくり返して反対側も同じように切り取ります。片刃構造の出刃包丁が、魚の骨にフィットし、滑らかに切り進めることができます。
切っ先で腹部分を切る | 切っ先で背の部分を切る | 全体を切り離す |
4.骨を取り除く:取り出した身から、腹部分の骨を切り離します。小骨が残る場合はピンセットなどで丁寧に取り除きます。
腹部分の骨を切り離す(表) | 腹部分の骨を切り離す(裏) |
包丁の研ぎ方
繊細な魚を捌くためには切れ味が良い包丁を使うことが大事です。包丁の切れ味をキープするためには包丁研ぎが欠かせません。ここでは、基本的な出刃包丁の研ぎ方をご紹介します。
1、砥石の準備
まず、砥石を水にしっかりと浸します。砥石が水を吸って表面に水が残る状態になったら、研ぎ始める準備が整います。
2、包丁(表面)を数回に分けて研ぐ(中砥石の使用)
包丁を砥ぐときは全面を一括で研ぐのではなく、切っ先部分、中央部、アゴ部分とパーツに分けて研ぐことをおすすめします。左手をそえて押している部分が砥げる部分になるため、数回に分けて研ぐことで研ぎムラが無く全体がしっかりと砥げます。
切っ先部分 | 中央部 | アゴ部分 |
3、バリ(かえり)を確認する
研ぎをし終えたら、きちんと砥げているか「バリ」を確認します。「バリ」とは包丁を研ぐと裏側に出る研ぎ跡のようなものです。裏側にひっかかりがあればバリがきちんと出ているということです。バリの確認方法は裏側を指で優しくなでて、引っ掛かりが確認できれば、その部分が砥げているということです。
4、仕上げ砥石で砥ぐ(6000番仕上げ砥石を使用)
包丁の裏側に出たバリを除去するため、包丁をペタっと砥石につけて数回のみ包丁研ぎをする。
5、小刃付けする
小刃付けは刃先の部分にするため、少し刃をたてて刃先部分を砥ぎます。刃先からあごに向かってスライドするように数回研ぎます。(約10回ほど)砥ぎ終わったら、裏面を数回研ぎバリを除去します。
出刃包丁の日常の手入れ方法
出刃包丁は多くの場合ハガネ系の鋼材の物が多く、サビてしまって使えなくなったという人がいるほど、手入れが必要な包丁と言えます。ハガネの包丁を使った事がない人でもポイントを知っておけば、きちんと手入れができますので、ここでは日常の手入れのコツをご説明します。
1、使用後はすぐに洗う
包丁に食材が付いたままになっていると、5分でもサビてしまいます。包丁を買ってすぐにサビてしまったという人もいますが、これは新しい包丁、古い包丁に関係なく、ハガネの性質上、サビは酸化すれば付くので、気を付けましょう。
2、水分をふき取る
包丁を洗ったら、水分をふき取りますが、布巾などで表面を拭いただけでは鋼材の中の水分が残ってしまいます。そのため、刃の部分にお湯をかけて水分を蒸発させてからふき取ることをおすすめします。
3、油で錆止めをする
ティッシュに数滴の油をとり、包丁の刃の部分に薄く油を塗ります。アゴ部分や背の部分、刃先なども忘れずに油を塗るようにしてください。
砥石と包丁研ぎの便利グッズ
ここまで研ぎ方や手入れに使用した砥石や油など、包丁のメンテナンスに必要なグッズを紹介します。
包丁研ぎに使う砥石
ここでは、實光がおすすめするセラミック砥石の中砥石と仕上げ砥石をご紹介します。
包丁研ぎに欠かせない中砥石です。セラミック砥石は研磨力が高く、包丁研ぎがしやすい砥石です。
仕上げ砥石を使用して包丁の仕上げをすることで、包丁の表面がスムーズになり美しい見た目になります。
砥石のメンテナンスに必要な修正砥石
包丁研ぎをする時に、砥石が平らでなければ、包丁をムラなくとぐことができません。毎回包丁研ぎをする前には修正砥石で砥石を平らにしてから行なうようにしましょう。
使いやすい取っ手付きのダイヤシャープナーは砥石を平らにしやすく、減りが少ないタイプです。
修正砥石#100(荒砥石用) | 修正砥石(中砥石・仕上げ砥石用) |
砥石を安定させる砥石台
砥石の大きさに合わせて調整可能な砥石台は、砥石が安定して包丁研ぎがしやすくなります。
包丁専用サビ止め油
包丁のサビ止めには椿油などの油を使うことが多いですが、使いやすいスプレータイプのサビ止め油を販売しています。ティッシュなどに1スプレーするだけで、薄く刃に油をぬりやすくなります。
あなたにぴったりの出刃包丁を見つけて、魚料理を楽しもう
切れ味抜群の「出刃包丁」を手に入れると、今まで苦手だった魚料理が得意料理になるほど、魚が上手くさばけるようになります。ウソのように思うかもしれませんが、この記事で紹介したように、材質やサイズにこだわってあなたに合った出刃包丁を選べば、本当に魚料理がしやすくなります。
最強の切れ味を持つ高級鋼材の包丁や、デザインが魅力的なもの、手入れが簡単なステンレス製のものなど、選択肢は豊富です。正しい使い方と定期的なメンテナンスを行えば、出刃包丁は一生ものの相棒として、あなたの料理を支えてくれるでしょう。實光刃物が提供する多種多様な出刃包丁の中から、あなたにぴったりの一本を見つけてください。
さらに詳しい情報や実際の使用感を知りたい方は、ぜひ實光刃物の店舗を訪れてみてください。専門家のアドバイスを受けながら最適な一本を選ぶお手伝いをさせていただきます。